ヤクルトが、2年連続9度目のセ・リーグ優勝を飾った。5月12日に首位に立ち、7月2日には2リーグ制後ででは最速のマジック点灯。圧倒的な強さでセ界を制したチームの中心には、村上宗隆内野手(22)がいた。日刊スポーツ評論家の宮本慎也氏も、その存在感を認める。

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今年のヤクルトは本当に強かったと思う。終盤戦は少しもたついたところもあったが逆転優勝するチームはないと感じていた。そう思えたのは、村上宗隆の存在抜きにはあり得ないだろう。

昨年も文句なしのMVPを獲得しているが、今年の活躍は、完全に去年を上回っている。新型コロナでの離脱者が多く、9月上旬ぐらいに苦しい戦いが続いたが、村上のバットが何度もチームを救っていた。

野球は団体競技。決して1人頑張ったぐらいで勝てる競技ではないが「1人の力」をこれほど大きく感じた優勝はなかったと思う。

当然相手チームは、最初に「村上の前に走者を出さない」と考える。1番から3番までの選手を全力で抑えにいくわけだが、ここに“落とし穴”がある。甘い球は投げられない→慎重になってカウントが悪くなる→それでもフォアボールは最悪→だから最後はみえみえのストライクゾーンで勝負する。このパターンで打たれるケースが多かったし、慎重になりすぎ、最悪のフォアボールにもつながっていた。

村上の存在が大きすぎるから、後ろを打つバッターも楽だったと思う。本来なら、村上との勝負を避けられて自分との勝負を選択されればプレッシャーはかかる。しかし、村上と勝負を避けるのは当然で、誰もがそう思う。プレッシャーが全くないわけではないだろうが、なめられたわけではない。そして村上が歩かされれば一塁は埋まっているし、ストライクゾーンで勝負してくる確率は高くなるだけ。妙なプレッシャーはなく「打てばいい」と集中できる。4番村上を中心に、打線は“線”になってつながっていた。

昨年、巨人岡本和とホームラン数で並んで争っていたとき「村上も人の子だなぁ」と思ったときがあった。打ちたい焦りからか、少しバッティングが強引になっていた。

昨年より成長した姿は、節目のホームランに表れていた。今季はタイトル争いするライバルがいなかったが、野村(克也)さんに並んだ52号はバックスクリーン左にたたき込み、王(貞治)さんに並んだ55号は左中間スタンドに放り込んでいる。見逃せないのは、どちらも打ったのは外角球で、2本とも打った瞬間にホームランだと分かる打球。アベレージヒッターのようにコースに逆らわずに逆方向へ打てれば打率は稼げる。その上、逆方向でも軽々とスタンドまで運べるのだから当然、打点も稼げる。村上だけができる“3冠王打法”と言っていい。対戦するバッテリーが気の毒に思えるほどのバッターに成長している。

これほどまでのバッターになりながら、まだ22歳。強いて課題を上げるなら、守備だけ。ショートより守備機会の少ないサードで、失策15個は少し多すぎる。誰もが「歴代NO・1のサード」と認めるような選手になり、将来的にはメジャーでホームランのタイトルを獲得できるような選手になってほしい。(日刊スポーツ評論家)

セ・リーグ優勝を決め胴上げされるヤクルト高津監督(撮影・河田真司)
セ・リーグ優勝を決め胴上げされるヤクルト高津監督(撮影・河田真司)
リーグ連覇を果たし胴上げされるヤクルト高津監督の後方ではつば九郎も喜ぶ(撮影・足立雅史)
リーグ連覇を果たし胴上げされるヤクルト高津監督の後方ではつば九郎も喜ぶ(撮影・足立雅史)
ヤクルト対DeNA 9回裏ヤクルト1死二塁、サヨナラ適時二塁打を放ち、山崎(右)と歓喜する丸山和(撮影・江口和貴)
ヤクルト対DeNA 9回裏ヤクルト1死二塁、サヨナラ適時二塁打を放ち、山崎(右)と歓喜する丸山和(撮影・江口和貴)